会長挨拶

現在、日本の保健医療システムは2025年問題に対応すべく、地域包括ケアシステムの構築などにより、そのあり方が大きく変容しようとしています。多職種連携を前提とする地域包括ケアシステムにおいて、助産師が自らの社会的役割とその意義を明らかにすることは緊急な課題であるといえます。そこで、会長就任時より助産師活動の可視化を重視して取り組んできた内容について主なものを紹介致します。

1.「埼玉県助産師会会員活動調査票」の作成

この調査票は、平成17年より10年間、保健指導部会事業として行ってきた「母子保健活動調査」の内容を改定したものです。本会会員の活動を量的に集計することで助産師活動を可視化してまいりました。しかし近年、産後うつや虐待などの問題が深刻化する中で、ケアを実践する助産師はその技術だけでなく、切れ目ない支援を行ううえで不可欠な対象者や関連機関との関係性や自己研鑚など、助産師としてのあり方についても重視しています。そこで、当会の理念を踏まえ、助産師としての活動を「質的」に評価することで、 そのあり方についても可視化することが可能であると考え「埼玉県助産師会会員活動調査票」を作成することとしました。このように、会員の皆様が日ごろ行っている助産師活動を質的に明らかにすることにより、多職種連携が促進される地域母子保健において、助産師の強みや新たな課題を明らかにできると考えます。

2.助産所研修制度の設置

助産所研修制度とは、すべての助産師が開業助産師の自立した技術を学ぶことができることを目的としたものであり、勤務形態に関わらず、助産師としての資質や技術の向上を目指すものです。今後、地域包括ケアの促進に伴い地域母子保健における課題も複雑化・多様化することが予測されます。そのような状況において、エビデンスに基づいた開業助産師の技術は、母子保健上のニーズに対応するだけでなく、地域や生活に根ざした保健医療を実践するうえで、ますます重要視されるものであるといえます。また、本制度は潜在助産師の職場復帰の支援も目的としています。助産師を含めた保健医療従事者の不足は日本の保健医療における課題となっています。多くの人々が助産師のケアを受けることで健康の維持・増進を図ることができることを目指し、潜在助産師の職場復帰を支援することは私たちの責務であると考えます。

3.医療事故調査制度に関する研修

平成27年 10月に医療事故調査制度が開始されました。 会員が、医療事故の再発防止を重視した本制度の意義を正しく理解することを目的とし、研修会などを開催しその周知に努めてまいりました。
本制度は改正医療法に基づくものであり、医療法によって定められている助産所や助産師は、病院や診療所と同様に周産期領域における新たな責務を担うことになります。本制度が求める社会的責務は、助産師の社会的意義を強調するものであることから、会員全員が本制度の内容を正しく理解することが不可欠であると考えます。


 助産師は長きにわたり、地域母子保健を支え、人々の健康増進に寄与してきました。しかし今、大きく変容しようとしている日本の保健医療システムの中で、助産師の役割やその意義が問われています。助産師会の特徴は、それぞれ勤務形態が異なる助産師で構成されている3部会で組織されていることです。各部会が連携することで、助産師の長い歴史を継承しつつ、社会の動向に応じた活動を展開することが可能となります。これからも、3部会連携を促進し、助産師の活動の可視化を意識して、引き続き母子保健の向上のために活動を展開していきましょう。

平成29年3月                           

一般社団法人埼玉県助産師会 
会長 田口眞弓